『Flip-Up Tonic』について

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第45回ぴあフィルムフェスティバルPFFアワードにて、昨年サークルで作った短編映画『Flip-Up Tonic』を入選作品に含めていただけることになりました。制作に関わってくれた皆様、改めて貴重な時間をありがとうございました。誰に向けられているのだかよく分からない文章をこの作品について書いたので、映画祭を前に晒してみようと思います。


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まず概要ですが、映画祭に関わるどなたかが「スリリングな事務会話サスペンス!」とか「人間とアンドロイドをめぐるハイテンポな会話劇サスペンス」という見出しとともに以下の紹介文を書いてくださいました。(少なくとも)サスペンスとしては失敗に終わっているように思いますが、こういうあらすじで進んでいくスタンダード・サイズの白黒映画です。

人型アンドロイド「リーチャー」を巡る被験者募集に応募した大学生の多良野。実験中、多良野はリーチャーに逃げられ落ち込むが、実験にはある秘密が隠されていた。事務的な会話から謎が広がっていくスリリングな展開に注目。

6〜7月に行われた高円寺国際学生映画祭というイベント(ここで初めてスクリーンにかけていただきました)のパンフレットに載せていただいた拙文も転載します。昨年秋の撮影時からは考え方が変わった節があり、当時ニヤニヤしながら詰め込んだ大量の小ネタを嬉々として説明する気にはなれないのですが、もしご覧いただけるならこの程度でも多少の補助線になるかもしれません。

アナグラムが新たな意味をなすよう限られた要素を並べ替える遊びだとすれば、『Flip-Up Tonic』は暴走するアナグラムの産物に他ならない。一連の出来事はドアや鏡や窓によって解体され、トンネルを抜け出て棺桶へかえる循環が捏造される。そこに人間はいない。

主にはSFっぽいことを一切せずにSF映画を作ることと、時系列をごちゃごちゃと操作することが主にやりたかったことでした(PFFのパンフレットにもう少し詳しく書いたものを載せていただけるはずです)。どのくらいの割合の方にウケるかが未知数なのですが、人によってはひたすら退屈するだけかもしれません。あと2回目の視聴くらいがいちばん面白いのではないかとも思っていますが、これももう見すぎてよく分かりません。

 

さっそく詳細な批評を載せてくださった方がいらっしゃいます。全体の作りを整理したうえで、「滑舌」という何度も見返している者の意識にはのぼらない角度から分析をしてくださっています。力不足により偶発的に取り込まれてしまったような要素まで汲み取ってくださり、大変刺激の多い文章でした。改めて感謝にたえません。

もともと批評のようなものに憧れを持ち、引き出されるべき分析の側から逆算して映画を作ったら面白いのではないかという浅はかな思いつきから制作に手を出した人間なので、自作をこのように迎えていただけると大喜びしてしまいます。ここまでの時間と労力を割いてくださると申し訳ない気もしてくるのですが、幸運にも多くの方にの目に触れる機会をいただけたのでこの先数週間が楽しみです。制作から1年近くを経て他人の作品のふりができる程度には距離を取れるようになったいま、ご覧いただいた方とこれは一体何なのだろうと話ができたら幸いに思います。

 

『Flip-Up Tonic』は他の2作とともにコンペティション部門Fプログラムに含まれており、国立映画アーカイブで9/9㈯ 11:30と9/15㈮ 14:30の2回上映があるほか、U-NEXTなどでも配信される予定です。もしご都合がついて気が向くようなことがあればぜひご笑覧ください。

お時間と気分が許せばご感想やお叱りの言葉をいただけるとなお嬉しいです。上映時は会場におりますので、ご遠慮なくお声がけください。